実生で銘品を作り出すことは可能か? 第3話

さて、今回は取れた苗はどういう柄の性質があるのか?をテーマにしてみましょうか。
実際、実生に使う親によって様々な特徴があります。

その辺りを少し紹介してみようと思います。

3.実生苗にはどういう柄の性質があるのか?

実生苗から銘品クラスを得るためには、実生を選抜する事になります。
では、実生の柄がどのように変化するのかをある程度理解した上で、選抜する必要も出てくるでしょう。

では、実生苗の柄は親によってどのように変化する性質があるのでしょう?

実生苗は親株の特徴によってそれぞれ柄の出方に違いがあります。
自分で実生しない限り、それぞれの特徴を具体的に理解することは難しいと思います。

大まかに分けると、以下のように分けられます。

①一年目は地味な柄が入り、以降年々暴れながら派手になっていくタイプ

いわゆる小島峠系統などがこのタイプです。
利休錦もこのタイプのように思われますね。
こういう特徴を持った斑入り個体は小島峠以外にも多くあると思います。

1年目は少ないながらも柄が入り、2年目以降から年々派手になっていく傾向があります。
ただ、どんどん柄が進むというのではなく、派手になったり地味になったりを繰り返しながら大きくなっていきます。

私の気のせいかもしれませんが、偶数年生は派手になり、奇数年生は多少地味になる傾向があるように感じます。

綺麗ですよね~。
小島峠系統の実生苗が人気なのもうなずけます。

私も大好きなのですが、もう全部出てしまって、2年生以上は残っていません・・・。(涙)

②1年目には柄が出ず、3年目以降辺りから徐々に柄が出てくるタイプ

黄聖錦や西祖谷産白三光斑などがこのタイプです。
また、一部の黄散り斑やゴマ斑系統でもこの特徴を持った個体がよくあります。
後冴えのゴマ斑系統がその類いで、発芽1年目は柄がほとんど出ません。

1年目に柄が出ることはほとんどありません。
2年目でごくわずか、3年目辺りから柄が派手になって来ます。
そして大きくなり株に力が付くほど、柄も派手になる傾向があります。

この性質は栽培上とても有利です。
実生の小さな時を地味柄で過ごし、大きくなってから柄が出るなら、普通の青葉並に育っていきます。
ただ欠点は、小さな時に柄が出ないため、実生の1年生は取引することが難しい点です。

黄聖錦や西祖谷産白三光斑の実生苗の中には、何年経っても青葉しか出ない個体も見られます。
もちろん、5~6年後に良い柄が出る可能性もありますが、保証なんてありません。
ある程度大きくなって、素質が見えるようになってからの選別ということが、妥当なのかもしれません。

逆に、ある程度大きくなった苗で素質がありそうな個体となりますと、安価で買うのは無理でしょう。

買い手側としてはその辺りがネックともなるのではないでしょうか。

素質を感じる黄聖錦系統の個体は、3年目でこのような感じになってきます。

3年生にしては大きく育っていますし、柄も一級品と思います。


③1~2年目に派手に出て、その後成長するにしたがって地味になっていくタイプ

この性質は栽培上は最も不利かもしれませんね。
小さな体力が無い時期に派手ですと、作りにくいです。
実生苗の段階から綺麗な柄を楽しめると言うメリットはありますね。

産地を問わず白散り斑にはこのタイプが多いように思います。
ただ、白散り斑がすべてこの特徴になるとは限りません。飯田柄のように子供の頃から大きくなるまで派手具合に大きな変化がないものもあります。

④最初から開花サイズまでずっと同じ柄で育っていくタイプ

全面総柄で出るタイプです。
黄金郷や塩山など、砂子っぽいものにはこのタイプが多いです。
また、はけ込みや萌黄系統・黄散り斑系統もその傾向が強いように思います。

成長による影響で柄が変化しません。
逆に言えば、1年目で柄が無い個体や素質を感じない個体はふるい落とします。

毎年安定しているという点は銘品が備える条件といえばそうですが、変化が無いことはおもしろみもないと思う人もおられるかもしれません。

また、葉緑素の少ない派手柄ですと、いつまで経っても大きくなりません。
超派手柄個体はそのまま大きくなるならロマンがありますが、そこはあくまでロマンです。(笑)

こんな個体もあります。

1年目からずっとこの柄です。ちょっとロマンがありますね~(笑)
これほどの個体ですので、枯れるかと思いきや、ゆっくりではありますが枯れずに育ってきています。

そういう意味ではこの個体はすごいと言えますね。

⑤1年目は派手に出て、2年目以降に地味になり、開花サイズになって突然本芸になるタイプ

このタイプは変
わった柄の変化を見せます。
うちでこの性質を顕著に持つのが「酔美人」です。

実生1年生

写真は芽出し間が無く、少々黄色味も強くなっていますが、梅雨時期にはすでに真っ白になっています。

この酔美人は2年目になると、ほぼ完全に真っ青になります。(笑)
ところが、2~3年目はほぼ真っ青ながら、4年目くらいから徐々に柄が出始めて、花が付くサイズになると、本芸を出してきます。

こんな感じになります。

残雪錦も似たような性質があります。

実生1年生

実生2年生

1年生は親と同様、結構派手に柄が出ます。
ところが、2年目以降は花が咲くサイズになるまで、地味な砂子状になってしまう傾向があります。

下手をすると、買う時期によって評価が変わるかもしれませんね。
地味な時期に上手に買えば、大きくなった時に大喜びできそうです。

さて、親や柄が違えば実生苗の柄が成長に伴って変化することが判ったとして、では実際実生苗を選抜する際には何を基準に残す事になるのでしょうか?

種別の特徴を捉えた上で、まず一つに選抜する時期も大事であることが言えますね。
1年目から選抜できるもの、逆に大きくならないと選抜できないもの、それぞれタイプに合わせて適切な時期に選抜する必要があります。

では適切な時期に実生兄弟の中から良いものを選ぶ際に、何を基準にするのか?
先ほどの特徴を踏まえた上で、実生1年生で選抜するなら、ある程度育ちを重視して選抜します。

実生1年生苗を購入する際に、ついついより派手な柄に手を出していませんか?

実生苗は根にの力を溜めていません。実生1年生は種の力しかありません。
ですので、あまりの派手柄を栽培するには、それなりの栽培技術が必要では無いでしょうか?
青葉の個体であれば、最速3年で初花が咲くこともあります。
しかし、派手柄は3年経っても3枚葉のまま・・・なんてことも珍しくはありません。
その間に一度でも調子を崩せば、いとも簡単にに枯れてしまいます。

では、地味な柄ばかり買えば良いのかというと、そう簡単にも言えません。

素質のある個体は小さな時からその片鱗を見せているのは事実です。
ですので、素質がありそうな個体を選ぶことは、当然大事です。

逆に、大きくなってから選抜するタイプの場合は、できるだけ派手な良い個体を選ぶと良いでしょう。
開花株や一作開花株なら、もうほぼ完成形と言っても良いですよね。
そこで地味な個体を選んで夢を見ても、やはり良い方に化ける可能性は少ないのではないでしょうか?

また、小島峠などがそうですが、実生苗の柄が暴れやすい系統は、2年連続で良い柄が出た個体を私は評価するようにしています。

ここまでの話も、基本実生苗を購入する際の基準では無く、実生苗を選抜する際の話です。
もちろん、購入するときにも知っておいて損は無い知識とは思いますが、あくまで参考としてお考え頂けたらと思います。

それと、経験がさほど長くない私の話ですから、その点も前提にお考え下さいね。
私はまだまだ試行錯誤しながら、まだまだベテランの方に教わっているレベルです。
記事の中でごく一部でも「へぇ~なるほどな」と思って頂けたらと思っています。

一番良いのは、購入先と良い関係を作り話を良く聞いてから購入されると良いと思いますよ。

さて、次回は実生の今後についてです。

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