暗む斑入りとどう向き合うのか

サボりブログな日々になっています・・・
多忙にかまけて、ブログの更新はおろか写真撮影さえも滞っている始末です。昔はどうやってこなしてたんでしょうね~?一昔前までは、毎日4~5時間の睡眠でなんとかなっていたのが、最近はできなくなってきたのも大きいかと思います。

さて、言い訳はこの程度にして、今回は暗む斑や地味な斑について取り上げたいと思います。
斑入りヤマシャクヤクの楽しみ方は人それぞれかと思います。とにかく白くて派手で綺麗な個体を棚に並べて楽しむ方や、たくさんの実生をして小遣い稼ぎをされる方まで様々と思います。10年前に比べて、斑入りヤマシャクヤク全体で見れば、そこそこ銘品たちも数が増えて、全体的にレベルアップしてきているなと感じます。ここ2年くらいは相場も安くなったと思いますし、それを嫌う方もおられるかもしれませんが、私個人的には高値の花であり続けるより、より多くの人が楽しめるよい機会だと思っています。結構な銘品が手に届きやすい価格になってきましたもんね。かつてとんでもない価格で取引された植物たちの話を聞けば、お祭り騒ぎの相場になっても結局多くの方が大損をするだけで、一稼ぎする人は早くから集めていた人など一握りだけです。

 価格の下落は、様々な銘品も数が増えたこと、同じ銘柄の実生苗が出回りすぎたこと、暗む個体の人気がないことなどが挙げられるかと思います。実際に山野草業界の方の話だと、斑入りのヤマシャクヤクは依然として売れ筋のようですし、人気が衰えた感じではないようです。白寿などの本当に素晴らしい銘品などがある程度手の届く価格になることは、ファンの裾野拡大に寄与するわけで、ある一線を越えない範囲で歓迎されることだと思います。しかし、暗んでしまう個体や地味な柄の個体は、暗まない個体と並べてしまうと、明らかに見劣りするため価格の下落については仕方がないことかもしれません。しかし、安価で手に入る個体にも実は活路が見いだせる場合もあります。そのいくつかの個体例を紹介してみましょう。


・黄金郷

春先、開花してしばらくは本当に素晴らしい姿です。ただ、5月の連休が明けてしばらくすると・・・

まるで別人のように暗んでいます。それでも萌黄として楽しむなら、全く見えないほどの柄でもありませんし、暗んでくれるからこそ枯れもせず毎年楽しめるわけです。暗むことを全否定する必要はありません。まあ、こんなことばかり言ってると、なんだかモテない子を必死で慰めてるみたいに聞こえちゃいますけど、この黄金郷には実は光るものがあるのです。
それは、これです。

それはこの白い点です。こんなことを言ってると、「おいおい、そりゃむりやり持ち上げすぎだろ!」って笑われそうですけど・・・。
そんなことはありません。このわずかにある光るものに期待をして実生してみますと・・・

これ、見事な三色の斑入りになってますでしょ?暗む黄金郷に、暗まない白斑が綺麗に入って見事なコラボになっています。この柄が出る確率は高くはありません。まあ、親もほんの一部に入ってただけですからね。私が黄金郷の実生を諦めずに大量にしてきたのは、こうしたことに期待していた側面もあります。
他の実生を見てみますと・・・

この実生にもわずかですが親よりも白斑が入っているのを確認できます。なので、今後はこの子が大きくなってから更に実生すれば、もう少し確率よく白斑混じりが出てくるかもしれません。しかも、この子は親よりも葉が丸くなっています。
つまり、暗む黄金郷も実生に楽しみが見いだされるのです。もちろん、甘い話ではないかもしれません。それなりにスペースは取られますし、年月もかかります。

ほら、右下の極黄とか面白いでしょ?こういうのを選抜して残していくのです。実生したときに、何か親と違う変化を見せるものは、驚くような個体ができあがるチャンスの場合もあるわけです。
関係ない話ですが、右端に写ってる子は、根が傷んで養分をうまく吸収しないためにクロロシスになってます。こういうのは斑入りじゃありませんので、見かけても買わない方が賢明です。

ちょっと話が逸れちゃいますが、暗んだ親の画像の下の方に写っていた個体、萌黄ですけど綺麗なんですよ。

萌黄を高評価する方って意外に少ないように感じますけど、美しいだけでなく他の白斑を映えさせるメリットもあって、棚には必須だと私は思っています。

これは、「厳島」という奈良県産の萌黄選抜個体です。この個体は採取された村の名前まである一点物で、過去にも1,2回ほどヤフオクに出しただけなので、数もあまりないでしょうね。本当に綺麗です。萌黄は少し作りにくく、数もありません。モンステラの斑入りなどの場合、海外ではこうした色合いの斑入りを”mint”と読んで、高評価されています。日本のヤマシャクヤクが本格的に海外から注目され始めることがあったら、こうした柄はとても好まれるでしょうね。


・暗むゴマ斑

ちょっと古い写真になりますが、これはゴマ斑の「燁(かがやき)」です。暗む系統のゴマ斑でも、春先は素晴らしい美しさです。それでも5月の半ばになりますと・・・

左はきら星の実生個体でさほど暗みませんが、右の地味な個体が先ほどの「かがやき」です。結構春先よりは暗んでますよね。しかしこのかがやきも実生しますと、

ちょっと赤星病エイリアンにたくさん襲われてしまい、かわいそうなことになってますけど・・・(汗)
ご覧のように、実生すると、そこそこ暗みにくい個体も出てくるわけです。ちなみに、花粉親は斑入りではなく花芸の「冨田紅」という徳島県風呂塔産の紅絞り咲き個体を使っています。

ほかにも、暗みやすい親から暗みにくい子どもが出ている例もあります。

これは花粉親に暗みにくい個体を用いて出てきたゴマ斑です。暗む性質は、花粉親を暗まない個体を使ったり、白斑や全く斑と関係ない花粉親を使ったりすることで、様々に変化するようです。この辺りのことは、比較実験などやって確認したわけじゃないので、何とも言えないことなんですけどね。しかし、体験的には実生には親同士に相性があるようで、セルフや交配する組み合わせによって、柄が出る出ないということから柄の良さまでかなりの変化を感じます。


・夢

これは「夢」という舟山のゴマ斑です。この個体はどうしようもなく地味ですが、実生すると、親には似つかないような個体も出てきます。

これ、柄もよいですが、葉も普通の2倍くらいの大きさがあって、迫力のある個体です。この実生は「夢」や赤とんぼ等を採取された香川の方が実生されたものですが、同じように夢を使って実生しても、やりようによっては地味な個体も出てきます。

これはセルフでできた個体です。葉が大きいことは同じなのですが、なぜか暗んでしまいます。どうやら柄のよい個体は、セルフではなく何かを交配して作られてるようなのです。母親が同じでも、子どもに違いがあるのは、花粉親の影響もあるのかと・・・。


 いかがですか?実際には私も知らないようなびっくりする面白い結果もあるでしょうね。私が知ってるだけでもいくつもあるわけですから。
暗む個体や地味な個体は、それ自体はさほど歓迎されるものではないかもしれません。しかし、いろいろ交配して楽しむには、親木の負担を考えると地味だったり暗む個体は母親として使いやすいというメリットがあります。実際、暗まない派手柄に種を付けると、やはり負担が大きいのか作落ちしてしまうことが良くありますし、白三光斑でも毎年続けて実生すると、地味柄になって戻りにくくなってしまったりします。

 柄の評価の低いヤマシャクヤクでも、実生の親として使うなら大いに利用価値はあり、逆に親を遙かに凌駕するような個体も出てきます。置き場所や手間のことを考えると、実生までされない方も多くおられるかもしれません。しかし少数でもよいので、宝くじを買うような気持ちでされてみてはいかがでしょうか?大半はハズレくじかもしれませんが、そのぶん当たりが出れば喜びは大きいものです。もちろん、母親選びや花粉親の選択も重要であることは、念頭に置いた方がよい結果も出やすいでしょうし、それが醍醐味だと思います。
 全ての低評価な個体が親として見いだされるわけではありませんし、駄目なものもたくさんあるのも事実です。また、実生にはそれなりの場所やコストもかかりますし、その多くがハズレに終わることの方が多いです。現実、私も実生苗を時々大量に廃棄処分しています。昔は処分品でも欲しい方に無償で差し上げたりしていましたが、今は本当に廃棄しています。捨てるというのはかわいそうで胸が痛みますけどね・・・。少しもったいないかな?とか、これは利用価値がありそうだなとか、悩むこともありますが、心を鬼にして思いきり処分します。こうした狙いから外れた苗たちを外に出すことは、やらない方が良いと最近は思っています。中途半端な個体が大量に出回ることは、相場の押し下げに繋がりますし、先でのヤマシャクヤク全体の価値も低下させるのでは?という懸念を感じます。実際、今現在価格の安いものに共通するのは、大量に実生苗が出回った物達です。本当によいものだけ残して、そうでないものは捨ててしまう位の覚悟を持って取り組んだ方が、希少性も高まり長い目で見たらよいのではないでしょうか?栽培のコストや労力を考えてもその方が現実的だと思うのです。

 暗む個体や地味な個体を実生で活かすことについて紹介しました。山から新しい魅力ある個体がこの先も見つかるとは思いますが、20年前に比べればその数はほとんど期待できませんし、仮にあっても非常に高額では、なかなか入手も困難です。
 これからのヤマシャクヤクは、実生で作っていく時代になることは間違いないと思います。実は、実生で今まで思わなかったような発見もいくつか出てきています。おそらく、大きな変革をもたらすであろう発見です。これについては、秋頃になると思いますが、ここではなく別なところで紹介させて頂こうと思っています。とても興味深い話なので、楽しみにしておいてください。

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