ネコブセンチュウとその対策

久しぶりの投稿となりました。
猛烈な長雨の後、蝉の鳴き声からコオロギなどの虫の音が聞こえる季節となりました。秋の虫の音を聞くと、いよいよ植え替えの季節です。

トップの画像は今現在の様子です。ホントに葉の傷みがひどいですよね・・・。
例年の様子と比べると、ここまでなるのは10月の後半ですので、今年の葉の傷みがいかに早いかということです。まだ植え替えを始めたばかりで、実際にどの程度作柄不良かは把握していません。特に悪そうな鉢から始めていますので、当然そういったのは数鉢ではありますが傷みもひどいです。ただ傷んでしまう個体は例年も皆無なわけではないです。

さて、例年は9月の終わりから10月にかけて植え替えをしていますが、今年は上部の傷みもひどいこともあって、少し早めに植え替えを始めています。植え替えの記事でも書こうかと思ったのですが、昨年も書きましたし被るのでやめておきましょう。
植え替えも春の芽出しと同じく一喜一憂ですが、ネコブセンチュウを見かけると憂鬱になりますね。うちでネコブを見かけることは年間通して無し、または1~2鉢位しか出ないので、対策は十分できていると思っています。今回はネコブセンチュウの性質や対策を紹介しようと思います。

1.ネコブセンチュウを知る

ネコブセンチュウは文字通り根にコブを作る線虫の一種です。あっという間に株を枯らすような恐ろしい物ではありませんが、自然治癒しませんし他の鉢にもうつっていくので、細心の注意と十分な対策を取る必要があります。

根の所々に文字通りコブができてるのが見えるかと思います。これはまだ軽い部類で、ひどくなると小根コブのところで分岐することもあって、もじゃもじゃした見た目になってきます。これを見逃さないことはとても重要です。

センチュウはたくさんの種類があり、宿主によって種類も変わったりします。自生地ですでにセンチュウがついている個体もあることから、ヤマシャクヤク特有のネコブセンチュウかもしれません。コブを見た感じですと、キタネコブセンチュウに似ているように思います。
古い根にもコブがありますが、注目すべきは白い小根のコブです。センチュウはここに潜んでいます。古い根のコブは昔のセンチュウ被害痕で見た目は悪いものの、そこに生きたセンチュウはいません。
ネコブセンチュウは、冬期は卵の状態で過ごし、春に卵から孵化して根に入り込みます。根に入るとコブを形成し、夏には成長して体内にたくさんの卵を形成します。ちなみに冬期はセンチュウは死に、卵の状態で翌年の春を待つことになります。この卵は、耐乾燥性や薬剤にも耐性があり、何年もそのまま死滅せず残るようです。
ネコブセンチュウが大量に根にとりついてしまうと、ヤマシャクヤクは水を十分に吸い上げることができなくなり、夏前頃から葉の萎れが出るようになってきます。ネコブセンチュウの存在を見つける機会は、植え替えで根を直接目視したときと、葉に萎れがあるときです。夏場に葉の萎れが出たときは、根腐れかネコブセンチュウを疑い、一度抜いて確認する必要があります。

ネコブセンチュウは、根に侵入する前は水の中を泳いだり、用土の中を移動します。つまり放っておくと、棚下の鉢はもちろん、周りの鉢にも移動していく可能性があります。ただ、最も警戒すべきセンチュウが広がってしまう機会は、おそらく植え替え時の汚染した用土からの拡散にあります。では実際にはどのような対策を取れば良いのか、紹介しましょう。

2.ネコブセンチュウへの対策

かなり昔にうちの棚ではかなりのネコブセンチュウが出たこともありますが、今ではほとんど見かけません。あっても年に1~2鉢程度で、そのほとんどがよそから入手した個体です。
ではネコブセンチュウにどう向き合うべきなのか、対策を紹介します。

①センチュウを死滅させるにはどうするのか

センチュウの退治は二つ方法があります。一つは薬剤を使う方法です。
センチュウ類に効果のある農薬がいくつかありますので、それを用います。雪割草など山野草をされている方は、バイデートがなじみ深いかもしれません。ネコブを確認した株を植え付けた後で鉢の上に薬をパラパラと撒いてやります。根にまぶして植え込むという話も聞いたことはありますが、それでは植え付け後の灌水であっという間に流れ去ってしまいそうな気もします。薬剤の粒は砂糖みたいに溶け出す物ではなく、飛散防止や使いやすいように砂の粒に薬をまぶしてあるだけですので、メーカーに確認したことはありませんが、流せばあっという間に薬剤成分はなくなるかもしれません。
ただし、薬剤はセンチュウ自体には効果はあっても、卵に対しては効果はほとんどないと思います。ですので、薬剤で防除される場合は、発見時とセンチュウの卵が孵化する春にも再度薬剤を撒くと効果的です。
私は自宅で栽培していますし、センチュウ薬の毒性を考えると、薬剤は使いたくありませんけどね・・・。なので、私はほとんど使っていません。使っておられる方の話だと効果は高いようです。

もう一つの方法は温湯消毒をする方法です。
センチュウは熱に強くはありません。ですので適合するお湯に浸けておけば、センチュウを殲滅できます。ちなみに、温湯消毒は卵にも効果があります。ですので、私はこの方法を採用してネコブセンチュウ対策をしており、効果も十分に感じています。
具体的な温度と処理時間は、

このようになります。こちらはセンチュウの研究で知られる三枝敏郎先生著「センチュウ おもしろ生態とかしこい防ぎ方」農分協 より抜粋しています。
ちなみに著書によれば、植物に侵入していないセンチュウは、50℃なら2~3分で死滅するようです。
この辺りの温度は植物にも限界の温度に近いこともあって、温度は必ず正確に計りながら作業する必要があります。私は給湯器の湯温を50℃に設定して、料理用の温度計で測りながら温浴しています。お湯をどのように用意するかはいろんなやり方があるかと思いますが、1℃でも温度がずれると効果が無かったり植物を傷めたりします。
温浴後は水でしっかり冷まして乾燥させないように新しい用土で植え付ければ、私の経験では50℃5分でも48℃20分でもヤマシャクヤクに深刻な障害は今のところ出ていません。ただし、これは秋の植え替えの時しか実証していません。春などにやると傷みが出るかもしれませんね。
ヤマシャクヤクを浸漬するついでに鉢も浸漬すれば、鉢の消毒も可能です。ただしその場合は湯温の低下が出ますので、必ず温度計を見ながら浸漬時間を変えて適合させる必要はあります。

自宅の庭で栽培されている場合は、人体・環境に全く悪影響がなく、個人的には温湯消毒をおすすめします。

②被害を拡散させないために何に気をつけるべきなのか

ネコブセンチュウは根だけではなく、植えてある鉢の用土にも卵やセンチュウ自体が潜んでいます。なので大事なことは、センチュウに侵された用土や株を植え込むための新しい用土・鉢・器具などに付着させないことです。もちろん、植え替えしている手やラベル、使用した器具にも付着しています。
ですので、まず植え替え時に鉢の用土を出す場所と植え込む場所と用具を別の所に完全に分けることです。センチュウに汚染された用土が付いた所にはセンチュウやその卵が付着してしまいますので、センチュウが全くいないことを確認してから植え込む場所に持ち込むようにします。植え込む場所にはセンチュウや病気のものを一切持ち込まないようにする必要があります。一つの場所で出して、そのまま植え込む事をすれば、翌年から棚全体の鉢にネコブセンチュウが広まる可能性もあります。

もし、株を抜いた時にネコブセンチュウを発見したら、まず一番にそのヤマシャクヤクを温湯消毒します。その後、用土を処分し、植えてあった鉢やラベルも消毒します。ヤマシャクヤク以外の物の消毒は、プラスチック以外は熱湯でも構いません。プラスチックの物や手は、洗剤でこすって洗えば十分と思いますが、プラ鉢はできればお湯で消毒するか破棄した方が良いでしょうね。
根にできたコブは温湯消毒すればそのままでも構いませんが、コブはそのまま根と一緒に大きくなって見た目がよくありません。ですので、取り除いて良いと思います。

センチュウに汚染された物を片付けたら、植え付け場所で植え込み作業をすれば安心です。また、ネコブが出た株にはラベル等で印を付けて、以後も予防で薬剤を使ったり夏場に萎れが出ていないかなど様子を注意をしておきます。


センチュウについて紹介しましたが、参考になりましたでしょうか?ちなみに、木酢液も予防効果などが期待できそうですが、こちらはまだ検証中です。
ネコブセンチュウ対策は、ネグサレセンチュウやシストセンチュウなど全てのセンチュウに効果があります。根腐れの問題も実はセンチュウが絡んでいるのはないか?と思ったりもします。調子の悪い株は全てセンチュウ対策をするのも良いかもしれませんね。
趣味で自宅の庭において栽培される場合は、個人的には温湯消毒をおすすめします。あくまで私が知ってる範囲で書いていますので、実際に対策される場合は自己責任でお願いします。私が試したところではヤマシャクヤクに問題は出ていませんが、貴重な個体でいきなり試さず、まずは安価なヤマシャクヤクで実証されると良いと思います。
全部の鉢にセンチュウ薬を撒けば十分な防除効果は望めると思いますし、量の多い生産業者さんではごく普通でしょう。しかし、バイデートなどのカーバメイト系殺虫剤はコリンエステラーゼ活性阻害薬であり、急性中毒を起こさない量でも毎日暴露していると中枢神経に何らかの問題を引き起こす可能性もあり、実際に亜急性中毒では抑うつや記憶障害などの症状が出た例もあります。自宅の庭やハウスの中で使用するのは私はおすすめしません。特に感受性の高い若年者がいる環境では控える方が良いと私は思っています。ちなみに、恐ろしいサリンも認知症の治療薬もコリンエステラーゼ活性阻害薬の仲間です。

ネコブセンチュウは山にもいるほど珍しくもないものです。栽培していく上でどうしても出会うこともありますし、購入した株にも入っていることも保証はできません。新しい株を手に入れた際には、ネコブに罹患しているかもしれないという気持ちで置き場所など慎重に扱い、万が一出てもうまく処理すれば良いと思います。
避けることのできないネコブセンチュウをよく知り、上手に対策すればさほど頭を抱えるほどのものではないので、うまく付き合っていくしかないですね。

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