遮光について再考する 3

さて、前回の記事では明るさを実際に測ってみました。
うちの棚が意外にも暗かったことに驚きです。もう少し明るいかと思っていたのですけどね・・・。
ベテランの皆さんはどのように遮光されてるんでしょう??
実際、私よりも遙かに栽培歴の長い四国の草友の方々は、50%以上の遮光に加え、この時期からはよしずを上に乗せておられます。イメージ的にはうちの棚よりも更に暗い感じがしますね。
それでもとてもよくできています。

ってことは、そんなに光量はなくても上作は可能なのではないでしょうか?

3.光量と光合成について再考する

さあ、ここからが大事なところです。

ヤマシャクヤクの光合成速度を最大限引き出すために必要な光量はいくらなのか?ということです。
ここで大事なことは光飽和点という言葉です。植物は光飽和点を超える光を当てても、光合成速度はそれ以上増加しません。
つまり、必要以上に強い光を当てても、全く意味が無いのです。それどころか強すぎる光を当てると、植物は持て余した光エネルギーを処理する必要に迫られます。
この余剰エネルギーの処理を葉の細胞内で行うと細胞内で活性酸素が発生し、その活性酸素は葉緑素を破壊してしまいます。強い日に当てすぎると葉が枯れたり黄ばんだりするのは、このためです。強すぎる日光は有害なのです。
強光下で葉が黄ばんでいるなら、ちょっと光量過剰も疑わなきゃいけません。
過剰な光を当てたからといって光合成速度は上がらず、それどころか葉緑体にダメージを与えては、元も子もありません。

陰生植物のヤマシャクヤクは、光飽和点も光補償点も陽生植物よりも低いはずです。ということは、強光線は全く不要と言うことになります。
葉緑素を傷めることなく光合成速度を最大化するためには、ヤマシャクヤクの光飽和点を知る必要がありますね。それさえわかれば、光量は光飽和点ちょうどを目指せば良いことになります。
しかし、前回の記事でも書きましたが、ヤマシャクヤクの光飽和点が何ルクスなのかは解りません・・・。似たような植物を元に類推するしかないですね。
そこで、他の植物などを参考にしてみましょうか。


100,000ルクス  夏の晴天12時/日照過剰で、植物の種類によっては枯死
60,000ルクス 主な野菜に適切な照度/トマトの光飽和点
 50,000ルクス イネやキュウリの光飽和点
 40,000ルクス 果樹の光飽和点
32,000ルクス 曇天12時
30,000ルクス 主な観葉植物に適切な照度上限
 25,000ルクス 完全閉鎖型の植物工場(レタス)の光量
 20,000ルクス 冬場の曇天/ミツバやレタスなどの光飽和点
 15,000ルクス 冬場の曇天/シクラメンの光飽和点
10,000ルクス 曇天日の出1時間後/シンビジュームの光飽和点
  5,000ルクス 明るい日陰/セントポーリアの光飽和点
  2,000ルクス 一般的な観葉植物の成長の最低目安
100~400ルクス 多くの陰生植物の光補償点

この辺を参考にしてみると・・・
明るい林道などにミツバが生えているのを見かけることを考えると、ヤマシャクヤクも10000~20000ルクスあたりが光飽和点じゃないでしょうかね?
もう少し参考になるデータが欲しいところですが、探す時間も無くちょっとその辺が心許ないところなのですが・・・。
この辺の光飽和点を正しく探るには、実際に実験をしなきゃいけません。これまたちょっとハードルが高いです。

ちょっと微妙な光飽和点の仮定で話を進めますが、遮光としては50%位の寒冷紗で23000ルクスでしたので、その程度の光量なら一番光合成速度を速くできそうに思えます。

でも、仮にヤマシャクヤクの光飽和点が20000ルクスだとしても、本当にそれが理想の光量なのでしょうか?
うちのヤマシャクヤクを見ていると、気温30度を超える時期に50%の遮光下で栽培していると、少しばかり葉に張りがなくなるような気がします。これって暑さのせいもあるでしょうけど、やはり最大光合成速度は出てないような気もします。

ここまで光量についてだけ検証してきました。
光量のことだけ考えるなら、上記の結論でかまわないでしょう。
しかし、受けた光エネルギーは、必要以上だとかえってその処理にエネルギーを消耗し活性酸素が発生することは先にも述べました。つまり、必要以上も問題だと思うのです。

そこで、考えなきゃいけないのが、光合成速度は光の強さだけで決まるのではないということです。
光合成速度は、水分や二酸化炭素の量や気温なども影響します。光以外の要素の中でいずれか一つでも条件から逸脱してしまうと、最大光合成速度を出せなくなってしまいます。
そうなると、光量を光飽和点以上に設定してしまうと、光合成速度が低下すれば、植物の体内では光エネルギー過剰の状態に陥ってしまうリスクがあるのではないでしょうか?
それは有害な物となる可能性をはらんでいるような気がします。

私がもっとも速度低下をきたす原因になると考えているのが、気温です。
ヤマシャクヤクの光合成速度が最速となる気温は、20~25度前後ではないかと思います。そうなると、日中30度を超える気温の中で光飽和点並みの光量を当てても、実はヤマシャクヤクはその光エネルギーを全て消費できていない可能性が高いと思うんですよね。
それどころか、有害な活性酸素の発生につながるのではないかと・・・。

なんでも与えすぎは有害なように思うのです。

なので、私は光量が落ちても、夏場は寒冷紗を二枚掛けにしているのです。
要は温度と光量のバランスが大事なのではないかということです。

4.結論

以上のことから、私が思う結論は次の通りです。

・芽出し~開花時期まで
丈夫な葉である陽葉を形成するために、日光は直射日光か50%以下の遮光

・開花時期から最高気温20~30度の時期まで
最も光合成速度が最速となる時期なので、日光は20000ルクスを目標に50%の遮光

・最高気温が30度を超える夏場
気温上昇に伴い光合成速度は低下するため、気温上昇防止と余剰な光を当てないようにするため、遮光は70~80%以上
もしくは、50%の遮光にさらに追加で50~70%の遮光の追加

・葉が枯れる秋以降
葉がないので、遮光不要

こんな感じで良いのではないでしょうか?

もちろん、山野草のプロの方やベテランの趣味家さんは、このような理屈をこねずとも、経験的に素晴らしい答えをお持ちだと思います。
私がここで検証したことも、類推などを元に考察している部分もあるので、どこまで正しいと言えるか微妙ですが、皆さんの栽培の参考になればと思います。

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