四国の凄棚と白三光斑 ~そして西祖谷産白三光斑~

四国の訪問先は白三光斑の採集者ということもあって、並んでいる白三光斑の数は半端ありません。

 

 

西祖谷産白三光斑にはいくつもの原種があり、私が知っている範囲で採集者・採集地・採集日を特定できる個体は今のところ7原種あります。

ラベルが良く分からなくなったものなども含めると、10種類は超えます。

 

もともと原種にそれほどバリエーションがあったなど、私も知ったのはわずか3~4年前の話なんですけどね・・・。

入手した頃はそのようなことは全く知らず、なんか少し特徴が違うような気もするけど、全部同じ物かと思っていました。

間に入っていた業者さんは、どれも一律「西祖谷産白三光斑」ということで扱われたため、私も何も知らずにそのまま買ってきたわけです。

 

しかし、違うものだと分かれば、今更ながらにこの貴重な原種達をきちんと区別して管理したい!ということで、もともとそこまでのこだわりのなかった採集者の方にもご理解頂いて、きちんと銘を付けてきたわけです。

今やっておかなければ、ごちゃ混ぜになってからでは困難になってしまいます。

 

 

もちろん、「細かく分ける必要はあるのか?」という意見もあるかもしれませんし、白三光斑ってことで一括りで良いじゃん!って言われるかもしれません。

でもそうしてしまうと、西祖谷産白三光斑も黄聖錦も区別できない似たものは全部同じでOKと言うことにもなりますし、そうなるとそもそも個体名もあまり必要性がありませんよね。

 

やはり植物学的には別のDNAとして分けておくべきですし、せっかく分けて管理することが可能な状況なのに、故意にごちゃ混ぜにしてしまうのはもったいないと思います。

 

実際には、個体の鑑別に関してはは容易ではない部分もあります。

だからこそきちんとしたラベル管理をしないと、植物学的な価値は薄れるかもしれません。

後から鑑別するのは難しいです。

 

まあ、薄れるというのは植物学的な部分の価値であって、趣味の斑入り山野草として園芸的な価値が薄れるわけではありませんけどね・・・。

血統書ではありませんが、園芸的な価値に加え植物学的な価値も付与しても良いのではないか?というのが私の思いだとご理解下さい。

しかしよくきちんと区別されて残っていたなぁ・・・と感心します。

 

 

では、個別に紹介しましょうか。

 

ちなみに産地は全て西祖谷ですので、割愛しますね。

 

 

まず、代表格から・・・

 

・赤とんぼ (あかとんぼ) 原種

写真は採集者の方の棚で今年撮影したものです。

赤とんぼは、西祖谷産白三光斑の代表格といっても良い個体です。

 

赤とんぼは、

・柄が良く、背も高くなる

・葉が丸みを帯びやすい

・春にしっかり日に当てておくと、夏前に白斑の部分に紅をさす

・軸の赤味がほとんど無く、青い

といったような特徴があります。

 

総評して斑のバランスが良く、大きくなった時に草姿が見栄えのする展示会向きの個体です。

白斑の部分紅を差す特徴から、赤とんぼとなったわけですね。

 

 

 

・祖谷の太陽 (いやのたいよう) 原種

祖谷の太陽も赤とんぼと双璧をなす個体です。写真は採集者の方の棚で今年撮影したものです。

 

祖谷の太陽は、

・派手柄になりやすい

・白寿を除く他の西祖谷産と比べて背丈は小さめである

・軸はうっすら赤味が乗る

といった特徴があります。

 

小振りながらも柄が良いことから、赤とんぼと双璧をなす個体ですね。

 

 

・白寿 (はくじゅ) 原種

写真は採集者の方の棚で今年撮影したものです。

小さいにもかかわらず、圧倒的な存在感を出しています。

 

白寿は、

・西祖谷産白三光斑の中で最も派手柄となる

・小振りで背丈が大きくならない。

・柄のない葉が出ることもある(地味な年もある)

・芽出しが遅い

といった特徴があります。

 

開花サイズになると柄も安定して派手になりますが、小さいうちは細かいゴマ斑っぽくなったり真っ青になったり、派手な掃け込みのようになったり変化に富みます。

 

この白寿だけは山でもこのような派手な姿で発見された他の個体にはない経緯もあります。

 

見た感じが他の西祖谷産白三光斑とは明らかに違い、一目で区別できますね。

 

 

・大和 (やまと) 原種

写真は採集者の方の棚で今年撮影したものです。

 

大和は他の西祖谷産白三光斑よりも比較的後に発見された個体です。

 

大和の特徴としては、

・今ある西祖谷産白三光斑の中では最も大型になる

・軸の赤味が最も強い

・葉に丸みがあり、大きい

といった特徴があります。

 

とにかく雄大で大きくなり葉も丸く見応えは抜群です。展示会などでは圧倒的な存在感でしょうね。

写真でも横の白寿と比べてら、いかに大きいかがお分かりいただけますでしょ?

 

 

・不動 (ふどう) 原種

写真は採集者の方の棚で今年撮影したものです。

 

白寿や天寿以外のどの西祖谷産白三光斑にも似ているのが不動です。

 

特徴は、

・大きさは祖谷の太陽に似る。

・軸に赤味があるが、大和ほど濃くはない

・開花時期が若干遅め

と、他の個体に比べて特段の特徴がありません。

 

不動はとにかく他の個体に似ていて鑑別が難しいです。

特に祖谷の太陽との区別は難しく、鑑定するとなると他の個体と一緒に作り込まないとできないほどです。

 

 

 

・天寿 (てんじゅ) 原種

写真は採集者の方の棚で今年撮影したものです。

 

天寿は他の西祖谷産白三光斑とは明らかに違いがあり、しいて言うと天寿と白寿は草姿は小さく似ているとも言えます。

 

特徴としては、

・白寿と同様、小型である

・柄の出方が極端で、枝全部が真っ白になったりする

・斑の色が他の白三光斑より白く、雪白に近い

等の特徴があります。

この天寿はとにかくユニークで、毎年度のように変化するか分かりにくい性質があります。

その分暴れも大きいですが、私が見ている限りでは年々派手になってきている感じがします。

 

発見もかなり後のほうになります。

 

 

・祖谷白龍 (いやはくりゅう) 原種

祖谷白龍のみ採集者の方が異なります。

写真は採集者の方の棚で今年撮影したものです。

 

特徴としては、

・比較的大型になる

・軸も赤味が強く、芽出し後に葉も他に西祖谷産より赤味が強い

・柄も派手で良好である

等があります。

 

黄聖錦はアントシアニンが豊富で、芽出し後しっかり日に当てると赤く染まる傾向があります。
それとは対照的に、西祖谷産白三光斑はさほど赤く染まらない傾向がありまが、祖谷白龍だけは明らかに芽出しの色が他の西祖谷産白三光斑と異なり赤く染まりやすい傾向があり、黄聖錦と少し似た一面も持ち合わせています。

 

 

 

 

 

上記7つの個体以外に無銘がもう数個体あります。

しかし、これらはいったんラベルが落ちているため、詳細な経緯が分からない部分があり、上記の個体と同列には扱いにくいです。

葉の形や開花時期に差があるので別個体であると言えそうですが、もう少し突き詰めてからの鑑定と言うことになりそうです。

 

 

 

西祖谷産白三光斑にこんなにたくさんの原種があったとは、初めて知った時は私も驚きました。

 

そこで3年前に私の棚に採集者のお二人をお招きして、うちに来た個体達の経緯をお話しして個体を実際に見て頂き鑑定して頂きました。

 

そして命名後にホームページで紹介してきたわけです。

 

 

ところが・・・

 

私も鑑定する目が肥えてきたこともあり、今年になって困った事実が判明してしまいました・・・。

 

鑑定が間違っていたんですね。

 

 

なんと、私が祖谷の太陽と思っていた2個体は、一つが赤とんぼで一つが祖谷の太陽だったのです・・・。

 

 

素晴らしい白三光斑として有名になったこの個体、実は赤とんぼだったのです。

今思えば、軸が青いんですよね・・・。

もちろん栽培条件にもよりますが、軸が青いのが赤とんぼの特徴でもあります。

 

 

ちなみに、

この写真の個体は当時の鑑定通り祖谷の太陽でした。

私は鑑定してもらってすっかり安心して疑問にも思っていませんでした。

 

こちらは祖谷の太陽に特徴的な柄と軸が赤いですよね。

 

当時はそのくらい鑑定も難しかったと言うことです。

今でこそかなり鑑定眼も肥えてきたので、今なら間違えなかっただろうと思います。

 

だからこそ今頃になって気がついたんですけどね・・・。

 

 

問題は今までうちから祖谷の太陽で実生苗を購入して頂いた事です。

 

大変申し訳ありませんが、当方から「祖谷の太陽」で苗を購入して頂きました方は、赤とんぼであったとお考えください。

もちろん、写真の個体が親であることに変化はありませんが、銘が間違っていたことになりますので、修正をお願いします。

 

 

先にも書きました通り、鑑別も不可能ではないものの容易に区別しづらい個体達なので、銘で分けて管理する事の賛否は双方あろうと思います。

今回の私のように間違いを招きかねない事も考えられます。

 

しかし、足繁く四国へ通い、何度もたくさんの個体を見てきた私は全て区別して全てを棚に並べたいと思いました。

 

これからは上記の銘が付いた個体が少しずつ広まってくるだろうと思いますが、鑑別が難しいだけにラベルの価値・管理を十分ご理解頂ければ、血統書と同じように価値も高まるかと思います。

 

 

 

ホームページの方はまだ修正していません。

近々きちんと改変し、特徴などわかりやすくなるようにするつもりです。

 

今しばらくお待ちください。

 

西祖谷産を一つのページにまとめるのが良いかもしれませんね。

 

 

結果的に銘を間違
えて扱っていましたこと、改めてお詫び申し上げます。

よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント

  • コメント (6)

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    • 2017年 4月 20日 7:11pm

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    こんばんは!
    西祖谷産白三光斑の記事、楽しみにしていましたが、納得の内容とその歴史に改めてこのヤマシャクヤクに興味が湧いてきました。
    実は、私の所に徳島の知人経由で西祖谷産白三光斑の割子があるのですが、親株は山取りの派手柄です。
    数人しか持ってないという事なのですが、手段が無いですが、一度見て貰えたら何かルーツを探れるかも?と記事を読んで感じました。
    白三光斑は、ヤマシャクヤクの中でも特に人気のある物だと思いますので、私も少しずつですが、集めたいと思っています。
    なので、この記事は凄く勉強になりますし、参考にもなる趣味を超えた記事だと思いました。
    ありがとうございましたm(_ _)m

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    >銀さん
    あら、派手柄の西祖谷ですか~。いいですね!
    ん~、写真での鑑定となると難しいとこですが、メールで送って頂ければ、真偽はともかく意見はできるかもしれません。
    また、入手経路でもある程度は個体の素性を調べることもできますよ。
    今回の記事が皆さんの参考と興味の一助となれば、うれしいですね^^

    • 2017年 4月 20日 8:27pm

    SECRET: 0
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    >バルトさん、こんばんは!
    メールで写真を送りとすると、どうしたらいいのですか?
    親株の写真と、現在所有している割子の写真を見て貰いたいですが、私がアドレスをここに書けばいいですか?

  2. SECRET: 0
    PASS:
    >銀さん
    メールで問い合わせの場合は、まず斑入りヤマシャクヤクの魅力の問い合わせの所から、ご連絡下さい。
    折り返しメールを返信します。
    ここにメールアドレス等は書かないで下さいね。

    • きょうみ
    • 2017年 4月 22日 1:54pm

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    こちらの記事 比較があってとてもわかりやすく 興味が増し増しになってきましたね~
    もともと 栽培たのし~☆ だけのブログではなかったからこそ 惹きつけられたわけですが、こちらの記事を読むうちに 見ただけで銘が言えるくらいにはなりたいな~なんて言う 無茶な野望が ド素人にも湧いてきたです笑。(・Θ・;)

  3. SECRET: 0
    PASS:
    >きょうみさん
    好きでたくさん何度も見ていれば、鑑識眼はついてきますよ。
    私もついこの間まではど素人でしたから、同じようなものです。^^

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