年間管理

ヤマシャクヤクの鉢栽培における年間管理について、紹介します。

 

 

《年間を通しての基本管理について》

 

 

・水やり

基本的に表面が乾いたらたっぷりやります。

水やりは栽培においても重要な要素で、作落ちさせないためには根を傷めないための適度な灌水が必要です。

湿地帯のような水やりは必要ありませんが、極度の乾燥は細根を傷めるため乾きすぎないような灌水が理想的です。

 

・肥料

当方は基本置き肥を中心とし、液肥はあくまで補助程度にしています。置き肥と液肥の比率や肥料の種類は、ご自身のお好みで良いと思います。

山野草の中ではヤマシャクヤクは肥料食いと言われていますが、あくまで山野草のレベルから見ての話です。肥料の選択や施肥量は生育を左右しますので、施肥のコツを会得するのも楽しみの一つと思います。

ただし、極端なやり過ぎは禁物で、購入した肥料の指示通りに施肥するのが基本です。

 

・植え替え時期

9~10月が基本です。株分けもこの時期に行います。

ただし植え替え自体は、根を洗ったりしなければ芽出し間がない時期以外は、いつでも可能です。

 

・温度管理

ヤマシャクヤクはご存じの通り日本に自生する山野草のため、必要ありません。

ハウス内で管理する場合の急激な温度変化や都市部での栽培など、山林であり得ないような温度を避ける必要はあります。夏の高温対策をする方が良く育ちます。

ただし、種を蒔いた鉢は凍結による霜柱が立つと、持ち上げられて根を傷めてしまいますので、凍結させないような工夫が必要です。

親株は耐凍性があるため、鉢の凍結については特に気にする必要はありません。

 

・遮光

斑入りの場合、夏には寒冷紗による遮光が必要です。

 

 

 

《各時期における基本管理》

 

 

①3月~4月

ヤマシャクヤクにとって芽出しの時期になります。なお、紅花ヤマシャクヤクは1ヶ月程度遅れて芽が出てきます。

また、芽出し後1ヶ月前後で開花します。

 

 

・水やり

この時期は比較的水やりを多めにし、乾かさないように気をつけます。

 

・施肥

この時期は肥料分が必要ですので、窒素分を切らさないようにしっかり与えます。

・遮光

桜が咲く時期までは必要ありませんが、桜の開花後は50%前後の遮光は必要です。

 

・消毒

開花時期までは比較的病虫害は少なく、特別な対策は要りませんが、予防的な薬剤散布はあっても良いでしょう。

 

灰色カビ病、うどんこ病・・・カリグリーンやダコニールなどの耐性菌を生みにくい薬剤で予防的に散布

シャクヤク根黒斑病、根腐れ病・・・ベンレート・ゲッター水和剤などを灌注

 

・開花と交配

花は短命で、せいぜい4~5日です。種を付ける場合は、めしべに花粉を付けてやります。綿棒を軽くほぐして受粉させても良いですし、おしべを直接なすっても受粉します。

ただし、種を付けると株が弱ってしまうため、貴重種や1本立ちなどの小さな個体では種を付けない方が無難です。

 

 

②5月~8月

開花後は葉も堅くなり、しっかりと光合成を行うようになります。葉もこの時期は美しく、楽しめる時期です。

 

 

・水やり

用土の表面が乾いたら、たっぷりやります。特に暑い時期は水切れに注意が必要です。

 

・施肥

春先ほどではありませんが、この時期も窒素分抑えめの肥料を与えます。ただし、暑い時期は強い肥料を使うのは避けます。

 

・遮光

50%*2枚くらいの遮光は必要です。特に柄のきつい斑入りは遮光しないと葉焼けを起こします。

 

・消毒

気温25度前後で多湿の時期は病気の好発時期です。逆に真夏の暑い時期は比較的発病しません。

 

灰色カビ病・うどんこ病・・・発病した場合は、ファンタジスタ水和剤やゲッター水和剤・ベンレート・トップジンMなどを散布

シャクヤク根黒斑病、根腐れ病・・・ベンレート・ゲッター水和剤灌注

白紋羽病、菌核病・・・バシタック水和剤の株元散布

ネコブセンチュウ・・・15度を超えると活動し始めるため、ネマキック・ネマトリンエースなどを散布

 

・種まき

受粉後3~4ヶ月で種が熟すため、採り蒔きをします。

詳細は過去ブログでも取り上げていますので、参考にして頂ければと思いますが、HP移転に伴いまた改めてブログでも取り上げてみたいと思っています。

 

 

 

③9月~10月

葉も徐々に枯れてきます。植え替えの適期になります。株分けをするのはこの時期以外はしない方が無難でしょう。

 

 

・水やり

表面が乾いたらたっぷりやります。

 

・施肥

気温が下がってくれば与えても構いませんが、特に必要ありません。与える場合は、葉の生理現象を見ながら与える成分を決めます。

 

・遮光

夏と同じく遮光します。

 

・消毒

夏前に発病のあった場合は、秋にも同じ病気が発生します。涼しくなってきたら予防的にカリグリーンやダコニールなどを薬剤散布します。発病がある場合は、夏場同様の治療薬を散布します。

使用する薬剤は春に使用したものと同じで構いませんが、続けて何度も同じ薬を使い続けると、耐性菌が発生しやすくなるため、薬剤を変更するもの良いと思います。

 

・植え替え、株分け

株分けや植え替えに適した時期です。

詳細は過去ブログでも取り上げていますので、参考にして頂ければと思いますが、HP移転に伴いまた改めてブログでも取り上げてみたいと思っています。

 

 

 

 

④11月~2月

葉も無くなり特段の管理は必要ありません。

 

・水やり

乾燥しない程度に水やりをします。

 

・施肥

寒肥を与えます。春先に使う油粕系の肥料と同じで構いません。

 

・遮光

必要ありません。

 

・消毒

この時期は発病もないため特に必要ありませんが、根腐れ病のみは発生することがあるため、芽が全く動かないなど異常があるときには土を少し取り除いて確認する必要があります。

また、うどんこ病が発生した棚ではこの時期も菌糸があらゆる所に潜んでいるため、作場全体を消毒することが望ましいです。

 

 

《総括》

 

ヤマシャクヤクは高山植物でもありませんし、基本的に育てやすい山野草の一つです。

うまくいかない時には、水やりが間違っていないかを考えるのがまず第一です。

また、肥料も生育を左右します。ほとんど肥料をやらなければ失敗も少なくてすみますが、山野草の中では肥料食いの部類に入りますので、作上がりを目指すにはそれなりの施肥が必要です。

 

私の所もそうですが、都市部の住宅街で栽培する場合には、やはり夏場の気温上昇で弱るのをいかに防ぐかという点も考え工夫すると良いと思います。

 

棚や栽培の癖などすべて千差万別です。いろいろな話を参考にしつつ作を向上させていくことこそ、山野草栽培の醍醐味です。

是非、ご自身で工夫改良されてヤマシャクヤクの栽培を楽しんでください。